The High-Velocity Edge - Chapter 9 (1)

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High-Velocity organization における、リーダの役割をについて。

High-Velocity organization のリーダたちは、次のような役割を果たしている。彼らに課せられた責任はすなわち、自分たちで集め、自分たちで良くし、自分たちで改革していくという組織の能力を、自律の中で、訓練を通して高めていくことだ。それらは、広い範囲で徹底して行われている。

Learning to Lead at Toyota

Toyota のリーダの一人、Don Dallis の話。

Learning to See and Solve Problems

Mike Takahashi は最初に Dallis を Toyota の West Virginia engine plant に配属させた。3 つの観点で、19 のメンバからなるグループの仕事を改善するためだ。3 つの観点とは人間工学に基づく安全設計、能率、オペレーション技能だ。6 週間にわたって、Takanashi は観察に重点を置いた。それは、現在の状態を現実的に見ることだ。どのように仕事が実際に行われているか、何の影響が実際に及ぼしているか。変化させることで、仕事における複雑な仕組みに対する最大限の知見が得られるようにするためだ。

  • もし、変更が上手くいったならば、Dallas は真に「なぜ」を理解できたといえる
  • もし、上手くいかなかったならば、少なくともそこに幾つかの間違えた考えがあったことになる。それは最初の理由付けが「机上の空論」に過ぎない考えだったのだ。

6 週間にわたって、Dallis は個別のオペレータの仕事にフォーカスしていった。彼は幾つかの変更を施した。笑ってしまうほど些細なものもあった。彼らの過去や将来の担当業務と比較すると、非常に些細なものだった。

  • ライン側のパーツラックの配置を変える。それにより、ものを取りやすくする。
  • 機械のハンドルの位置を変える。人間工学的に無理な負荷を軽減させるため。
  • 作業場の中でより現実に即したシフトを組む

Takahashi は予測に反した実際の結果についてきちんと追跡する事を徹底して大切にした。そして、Dallis と共に観察した。現実の効果はどのようになるか、Dallis が立てた予測と比較した。結果として、生産性と人間工学的な部分がより良くなったが、オペレーション能率(遅延なく機械が動作する時間の割合)は下がった。もちろん、従業員は機械をサボらせていたわけではないにもかかわらず。

そのため、Takahashi は Dallis に次の 6 週間、別の事を支持した。人に注目したのではなく、機械に注目させて改善活動を行わせた。信頼性と使いやすさを工場させる方法を考えさせた。
Takahashi は次のような事を強調した。Dallis にはあれこれ推測させず、実際に失敗が起きるまでじっと待たせた。それにより、それら失敗が起きた時と場所でその問題を調査する事ができた。
機械を直接調べていく事で、真因分析やそれぞれの失敗の再現ができた。そして、即時の改善、すなわち原因と思われる要因を取り除く事ができた。これにより、オペレーション能率は 90% まで向上した。しかし、これはまだ Takahashi の定める 95% には達していなかった。

Dallis は 12 週にわたって、調査することの大切さを学んだ。調査にあたっては、改善のための基礎と、期待したものについて明確な根拠として科学的な理論を使うことが重要であった。変化させたり変化の結果を調査することを徹底するよりも前に、それをする事が重要だ。

彼は働いてた中でそのプロセスを著しく改善させている間にこれらのスキルを学んでいたが、それは彼にとっての本当の Toyota になるための時間だったのだろうか。もしくは、かれは最初に同じようなスキルをより大きなスケールで実施しなければならず、そのための準備に過ぎなかったのだろうか。
答えは両方ともノーだ。

そして、Takanashi と Dallis は 日本にある Toyota の Kamigo エンジン工場に飛んだ。そこは、Ohno Taichi が最初にトヨタ製造方式とジャストインタイム工場の基本概念を得た場所だ。

到着するとすぐに、Dallis は研究課題に取り組んだ。最初の 3 日は、かれは一人のオペレータと共に、ひとつの機械加工セルでの仕事に従事した。3 交代のシフトで、彼らは 50 の変化を行い、従業員にかかっている過度な負担を緩和させる取り組みをしなければならなかった。それは何よりも本当に必要とされていることよりも、効果のあるものが求められた。

Dallis は以前には気づかなかった微妙な点が見えてきた。例えば、ジグを移動させるにしても、一つのの変更を加えただけでは
意味がない。それが従事者の右にあるべきか左にあるべきか、どれくらい遠かったか、肘や手首の角度や握りなど全てを気にしなければならない。

彼らはまた、スピードの欲求と訓練の強要は矛盾するということも学んだ。もし、かれが早く低コストにアイデアをテストするプロトタイプを構築したとしても。

Dallis は言った。「Mike は私により早く早く早くトライさせようとした。考えられる中で可能な限り最小の投資で。」

そういった中で、Dallis は学んだ。テストするためのスピードと、学ぶための教育はトレードオフで、それをいかに最小にしていくか、というものを。

大切なのは、科学的な理論を使うことで問題を解決し、深いナレッジを蓄積し、それを広げるという事、それは探求する中で学ばれていくということ。それらは、単なるソリューションではなかったのだ。

Bob Dallis の Toyota の最初の数ヶ月間をまとめると、次のようになる。

  • 現地現物を見ることの大切さ。それにより、問題を見つめることができる。ひと、もの、製品、プロセス、場所、時間、そういったものの前後関係を見ることができる。問題が起き、その熱がまだ残っている状態を調査することができる。
  • 改善活動を全て積み上げていくことの大切さ。それは仕事をする中で仮定を持ち、テストの中でそれを変化をさせていくことだ。

「溶接よりもネジしめ、ネジしめよりも接着」といった教訓がある。それは、速さと問題解決の訓練の間でトレードオフにはなりえない。

  • 報告の大切さ。単純に行動や結果を報告するのではなく、その理由付けが大事だ。なぜそういった行動を撮ったのか、期待される結果はどうか。そして、かもしれないとかいうものではなく、何が起きたかだ。

問題解決は、知識を得ることであり、それをシェアすることなのだ。

The "Process" of Leadership

Dallis は見つけた。見つけること、試すこと、そして早さがトヨタの中に浸透している。これは製造だけではなく、トレーニングのような実体のないものについても当てはまることを。
Dallis がトヨタのマネージャになるべく準備していく中で、Mike Takahashi は多くのプロセスを Dallis に注入していった。

例えば、Takahashi が Dallis に合う以前、Dallis のキャリアや業績に関する多くのデータ(履歴書、文献、逸話)を持っていた。しかし、Dallis の実際の行動については見たことがなかった。Takahashi は Dallis の実際の行動を見るまでは、不用意な類推などをすることなく、実際の行動を見てから Dallis の能力開発をすることにした。

そのため、彼自身のやり方をつかむべく、最初に West Virginia で公平に管理された環境下で働く中で Dallis の能力を見ていくことにした。West Virginia の環境は技術色の強い場所(エンジン工場)であったが、機会工作ではなく、組み立てという比較的シンプルな側面を持つ場所であった。

こうすることで、Takahashi は複雑さを緩和させた。それは Dallis に問題解決の方法、そして一緒に働く仲間を巻き込む方法を学ぶことに専念させるため。Takanashi は頻繁に Dallis の行動をみてきたので、適切なコーチングを行うことができた。それは、むしろ、トレーニングプロセスと共に問題を見つめること、頻繁に変化を試みることによって行われた。前もって準備された高いレベルのトレーニングプログラムを通じて彼なりのやり方で試してもらうというやり方というものではなく。

Dallis は問題解決やナレッジの共有に関して多くの重要なレッスンを受けてきたけれども、リーダシップに関するレッスンはそれでも注目に値するものであった。最初、チームのメンバは彼と一緒に三日間を過ごした。Dallis は次のことを発見した。彼ら現場のオペレータは仕事を行う能力がある。すでに適切に調整された、制御の必要ない環境の中で働く能力をだけでなく、良く整備されたシステムとなるように改善活動に参加する能力も。彼らはそれを日々の仕事の中でおこなうのだ。しかも、彼らの裁量の中で。最初の日、Dallis は彼の定めた 7 つの変化について実際にやって見せれた事にとても喜んだ。一つは、あるチームリーダーが 30 分近くかけて説明し、一方で他者は 30 分以上かかっていた。

Kamigo のグループリーダたちは、ナレッジのノウハウについて詳細なプロセスを示した。どのようにすれば、Dallis やチームリーダたちが彼らの経験からより多くのものを得られるかという観点で。そのために、彼らに挑戦的で哲学的な質問を投げかけた。

  • 何を探索したか
  • 何がみえたか
  • これについて何をしたか
  • 何を試したか
  • 何を期待したか
  • 何が手に入ったか
  • ギャップは何か
  • 違いが生じた要因は何か

グループリーダや製造・工場責任者は継続的にこういった取り組みができたし、Takahashi も止めることなく開発プログラムの一端を担っていた。

まとめると、

  • 現場の作業員は変化に慣れているので、例えば日本語の離せない社員が仕事のやり方を一時間に何回も変化させたとしても、製造の作業を継続させることができる。
  • 主任は自らの権限の範疇内で問題解決をおこなう能力を持ち、迅速な成功のために多くの変化を考え、実施することができる。
  • 上位の責任者は工場設備について大きな規模でプロセスを改革を実施する能力を持つ。新たな環境下で、従来と規模、領域、影響について類似性が少なかったとしても。Dallis のように 12 週にわたるトレーニングで身につけることができる。
  • シニアマネージャはプロセス改善を構築する力がある。

これが、高いトヨタのオペーション能力、そして改善力の源泉である。

The High-Velocity Edge - Chapter 8 (2)

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トヨタにおける Capability 3: Knowledge Sharing について。

Case: High-Velocity Product Design

トヨタの工場は競合他社と似ているが、半分の時間で倍のアウトプットを叩き出している。

ミシガン大学の研究チームは、以下の事を見つけた。

  • トヨタは顧客の喜ぶような製品を設計していた
  • 製造や設計に関わる時間をはとても少ない中で、製品を市場に送り出している
  • ベストプラクティスが見つかっていない状態でも、最適を見つけるために他のパターンをトライしていく

また、効果を上手く生み出すために、(a) 特に解決すべき問題に対するナレッジを生み出す、(b) 新しいナレッジを生み出すために専門的な集団を設ける、事をしていた。

ここで、トヨタと Chrysler を比較してみる。Chrysler も L.H という取り組みで品質、コスト、時間の最適化を図っていた。L.H では、次のような取り組みを行ている。

  • 多くの学問を横断したプラットフォームチーム
  • 独自の車両デザインを実現するエンジニアリングを同時に(時には従業員が兼務するなかで)遂行するための強いコミットメントの仕組み
  • 製造および供給を巻き込んだ強化
  • Chrysler Technology Center の導入による、企業の技術活動のための設備の集中化

上記のアプローチは、プロジェクト全体の成功を目指すものとして、より低いレベルで設計の裁量を自由にあたえるものであった。

一方で、トヨタはプロジェクトマネジメントとしては取るに足らないものとは程遠いアプローチをとった。専門家に対しては部署への説明責任を課し、主任エンジニアに対しては業務フローを強制するのではなく、きちんと説明し、調和させ、一体となるように働きかけた。

また、トヨタは、決断を遅らせるようにも見えた。根幹となるパラメータ設計について不確実さを許容し、高価で時間のかかるプロトタイプを許容した。その代わりに、最終設計が確定する前に詳細設計や鋳型の作成を始める事すらあった。そのようにして、トヨタはナレッジを素早く生み出し蓄積する事ができていった。

Knowledge Generation: Organized for Discovery

トヨタのアプローチは現実を反映させている。正しい答えは分からない。その中で設計プロセスを早めていく。そのために、トライアルを繰り返す事を通じてそれを見つけるのだ。

システムに対して責任を持つエンジニアは彼らの責任を小さく分割していく。そして、補佐のエンジニアはそれを受け取り、広い視点で解決するための方法を探る。

Knowledge Capture: Codifying Discoveries

トヨタのプロジェクトマネジメントの鍵は、経験やプロトタイプを決してそのプロジェクトのみで終わらせない事だ。

トヨタは細部まで考え抜いた訓練方法を持っている。それは、様々な実験の結果を蓄積し、学習書籍にまとめたものであり、その種類は多種に渡る。

学習書籍は、静的なものではない。新しいテクノロジーやプロセスの刷新が行われたら、学習書籍の改定が直ちに行われるのだ。

Case: Jishuken Activities

自主研の目的は、誰かが得た知識を他の誰かに上手く受け渡す事にある。

自主研は、一方的に行われるものではない。知識をシェアする方法をとしては、問題に対して共に向き合い、トレーニングセンタや学習書籍では十分にカバーできない部分を補足する事にある。

基本として、

  • 異なる部署の人々がお互いにチームを組む。
  • 順番に、彼らがそれぞれの場所で悩ましている問題に取り組む、という事を全ての部署で行う。

自主研には幾つかのステップがあり、

  1. 自身の業務プロセスに当てはまるようなホームワークを行う
  2. プロセスの改善ができるよう、部内で一緒になって取り組む
  3. 他のチームに広げていく

The High-Velocity Edge - Chapter 8 (1)

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トヨタにおける Capability 3: Knowledge Sharing について。

Shared Knowledge: Fuel for High Velocity

成功はたった一つのイベントによって得られるものではない。破滅もまた同じように、たった一つの失敗によって導かれるものではない。

破滅が起こり得るのは、多分な小さなインシデントが重なり合う時である。それらが積もると、すぐにシステムは破綻する。

成功を導くためには、良い結果を常に構築していくことが重要だ。

High-Velocity のリーダたちは、他の企業よりもより一貫し、長い期間続けて、小さな勝利を迅速に積み重ねていく。

アルコアは危険を伴うような産業であったが、取り組みを通じて他者が羨むような作業場の安全性を確保することができた。彼らは完全に安全なシステムを構築するために、次の事を行った。

  • 設計に潜む問題を明らかにするため、複雑な作業を管理する。
  • 問題を迅速に改善するため、ナレッジを直ちに構築する。
  • 現場で発見した新しいナレッジを組織全体にシェアする。

この章では、どのように High-Velocity organization が現地で蓄積した学びを組織全体のナレッジとして広げていくかについて述べる。

  • いかにしてトヨタはビジネスにおける基本的な問題に取り組んでいるか。
  • 新しい製品開発において High-Velocity を生む出すような知識をについて、トヨタはそれを獲得しシェアするためのメカニズムをどのように使っているか。

Case: Acceleting North America

BackGround: Global Localization

1970 年代から 1980 年代にかけて、アメリカはトヨタにとって単純な輸出市場ではなく、設計と生産のための場所となっていった。物理的にも文化的にも現地消費者に近づけることで、現地市場のニーズにより合致するような製品の提供を可能にしたいと考えていたのだ。世界のそれぞれの地域に適応する製品作りのためには、マネジメントシステム自体を輸出することを学ぶ必要があった。そのために、新しい設備の導入、新規の従業員雇用、サプライヤのネットワーク拡張という取り組みの中で、他社と対向していくことになった。

Global Localization Fist Steps: NUIMMI

トヨタにとっても、海外事業を拡張するということはチャレンジングな内容であった。トヨタは国内で使っていた偉大なマネジメントシステムのおかげで突出した製品を輸出できていた。世界規模でローカライズされた製品を提供するということは、トヨタ自身も述べているように、単純に企業は製品を輸出する事だけに異存するのではなく、モノを作るためのマネジメントシステムを輸出するための方法を学ぶ必要がある。

トヨタの最初のアプローチは、直面する状況を単純化することにあった。

新しく工場を操業させる時、製造担当者は多くの項目に関して検討をする必要がある。

  • どこに建てるべきか?
  • 何を作るか?
  • どのような製造技術を活用するか?
  • 誰を雇うか?
  • 誰に売るか?
  • その他たくさん

トヨタの設立した連結子会社の NUMMI は既知の事項に基づき、そういった変数の多くを固定化させた。これにより、余計な事を考えずにスピーディに工場を設立させる事ができる。

例えば、彼らは既存の GM の工場を転用した。設備をだけでなく、そこで働いていた従業員も再雇用したのだ。そのため、新しい設備や人的リソースを調達する必要がなくなった。ただし、GM との違いは、トヨタ生産方式を取り入れた事だ。

当初、トヨタは日本から経験豊富なリーダたちを呼び込み、上位の管理者に置いた。しかしこれは、持続的な取り組みにはならない。日本人はテンポラリな存在であり、現地の従業員たちの発展には寄与しないからだ。

そのため、代替手段として、現地の人たちをマネージャとして育てる事になった。

Packaging Toyota Know-How Export

ビジネスとして推し進めていく事のできるレベルに押し上げるためには、グループリーダレベルにまで教育を行き渡らせる必要があった。そのため、多くのコーディネータたちが時間を割き、ある工場からまた別の工場へと転々として教育にあたっていた。これにより、一つの工場に対して数年ごとに操業を開始する事ができるものの、複数の工場を立ち上げたり、短期間のスケジュールの中で工場を立ち上げるということは、やはり困難であった。

ここで、ジレンマが出てくる。マネジメントシステムの輸出という目標を掲げなければ、今よりもより短期的に成果を出す事ができるだろう。しかし、品質面で言えば、やはり当初予定していた強固なものは得られない。売り上げと品質面の両面を追求しなければならない中での選択が必要だった。

最初のステップとして、それぞれの製造現場に現場開発のための権限を与えた。これには、次のようなリスクがあった。それぞれ独自のアプローチでスキルを開発していくため、あるサイトごとにアプローチが異なる事になる。とあるサイトの方法がベストであるなら、別のサイトの方法はおそらくベストではないという事になる。そのため、シナジーを生み出せるようなアプローチに発展させる必要があった。

次のステップとして、Global Production Center を立ち上げた。GPC のトレーナーは、 製造に必要不可欠なスキル(塗装、締め付け、最終組み立てなど)、内部の物流、品質管理、設備保守を明確に定義した。そしてスタッフは基本的な部分のために体系化したガイドラインを積み上げていった。

GPC は製造技術のためのレシピを作成していくだけではなかった。彼らはそこにいるエキスパートたちにインタビューしていき、スキルを得るためにどのように訓練をするかを集めていった。

GPC のチームは製造のためのレシピを持っていただけではなく、そのレシピを伝えていくための仕事の標準化も行っていった。単純なエクササイズで集めた知識をシェアするのは困難であったからだ。

GPC はインタラクティヴなウェブを用いて視覚化したマニュアルを 3000 項目作成した。これで、重要なスキルについてデモンストレーションや説明をするのだ。一つを作成するのに 200 時間、トータルで 300 年分の労働時間が充てられた。これにより非常に多くの労働者たちの能力開発に必要な時間を半分にする事ができた。それでも、GPC はネジの締め付けや組当といった作業を直接教えるという指導方法については、やめることはしなかった。

また、グループリーダは、先に述べたような指導を部下に対して行うというだけでなく、問題の明確化や解決のサポートを部下に対して行うというところも重要な役割の一つと定義されている。

GPC は、トヨタにおけるベストナレッジを収集するとともに、現場の管理のための継続的なプロセスの開発に着手した。

簡単にいうと、彼らは仕事の標準を作ったのだ。
- abnormally management: 何がいつ間違ったのか、を明確にする。
- change-point management: 何か一つの事を別のものに変更する際、混乱を起こすことなく、いかにして準備し、人々を訓練する。

こうした取り組みをする中で、GPC はナレッジを放出にするにあたって、日本からに限定する事はしなかった。ヨーロッパ、アジア、アメリカから担当者を招いて日本のスキル習得を目指す事もした。

「振り返り」について。

振り返りは、PDCA でいうところの Check にあたる。別にきちんとした計画や行動ではなくても、自分の行動を振り返ってみると「ああすればよかった」とか「ここは我ながらよい選択だった」といったように振り返るだけでも、何かしらの知見が得られる。そういった意味で、改善のプロセスを継続させるという観点で、振り返りは重要である。

ただし、何も考えずにただ闇雲に振り返りをしていても仕方がない。もちろん、ひとりで振り返るだけであれば直感に従っていくだけでも良い(結果として何も身につかなくても、自分の時間が浪費されるだけなので誰にも迷惑はかからない)だろう。しかし、組織として振り返りを実施していくとなると、ある方向性を定めておくべきだろう。

評価指標を定める

振り返りを実施するに当たっては、論理的に導かれた評価指標に従う必要がある。ある組織集団はゴールを達成ために活動していて、そのゴールを達成するために評価指標を定める。これがずれたらゴールに辿りつけないし、これに従えばゴールに向かっていく事になる。いわば、評価指標が灯台になる。

評価指標を達成するための振り返りを行う

悪い部分を改善していくという振り返りであれば、評価指標が達成できていない部分について原因の深掘り(改善)をしていくべきである。先に述べたように、評価指標がずれたらゴールに辿りつけない。

悪いケース

「振り返りを行って悪い部分を何でもいいから出す」という形式だけが先にできてしまうというのは悪いケースだ。

例えば運用の現場で、「障害が発生した際には XX 分以内に情報展開をする」という KPI があったとする。振り返った結果として出てきた悪い点が、「復旧に時間を要した」だとか「構成図がイマイチだった」と言われたとして、客観的に辻褄が合うだろうか?

後者であれば、「構成がきちんと理解出来ていなかったから、正しい状況把握ができなくて情報展開が遅れた」という話の持って行き方もできるかもしれないが、少なくとも前者は的外れになるだろう。

むすび

「従うだけ」のレールに乗るのは居心地が良いのかもしれない。しかし、「何故それを我々はしなければならないのか」をきちんと理解しなければ適切なレールを敷くこともできないし、適切なレールを走っているかも分からないし、脱線していることにすら気づかないかもしれない。

車車間、路車間。

DENSOdocomo が通信を利用した車両制御システムの研究を協力して進めるとのこと。

car.watch.impress.co.jp

具体的にどのような通信形態を考えているのかは分からない。LTE だの 5G だの言っているし、docomo が研究するくらいし、イメージ図からしても路車間通信のように見える。この種の研究自体はアドホックでも路車間でもずっと前から研究されている分野なので、IoT と同じく「5G 普及時の主導権争いの一つ」なのだろう。

記事の中では、「高度運転支援や自動運転技術」との言葉があるので、カーナビゲーションのための情報提供といった付随的な役割ではなく、より「安全」だとか「人命」に近いところを確保するために車両を制御する事に重点を置いているようだ。エアバッグなんかと同じ位置づけだろう。そうなってくると、技術の信頼性というのは非常に重要になってくる。使えたり使えなかったりみたいなものであれば、もし事故が起きた際に「インフラとしての責任」が問われる可能性があるからだ。

そういった前提の中で路車間をやるとなれば、それこそ、「全ての視界の悪い交差点に対して通信を行うための基地局を置くのか?」という話になる。基地局といっても、実際にはとても小さいものになるだろうし、一台あたりのコストは小さいだろうけれど、国土の狭い日本とて世の中にいくつ交差点があるだろうか。

LTEカバレッジは 98% 以上なのだから、新規に基地局なんて打たなくても良い」という考えもあるかもしれないが、「実はエリアになっていなかったのでシステムが適切に作動せずに事故になった」みたいなことも考えられる。そもそも局地的にしか意味のない情報伝達を、LTE のネットワークに乗せて行うか。より低遅延かつ、局地的な情報のやり取りを考えると、どれだけ路車間用の基地局を打てるか」が勝負になるだろう。まぁ、実際には費用対効果が付いて来るはずはないのだけれど。

落とし所としては、車車間と路車間のハイブリッドという事になるのだろうけれど、どういった社会が実現できるだろうか。車車間通信では幾分精度の低い制御を提供し、より危険な交差点(事故が起きやすいといった実績があるところなど)については、その地方の警察などと連携して基地局を設置していくといったところか。それであれば、歩行者の持つスマートフォンと連携して、ある種の信号機のような使い方(信号の設置できないような場所には、スマートフォンの存在を検知して基地局が周辺の走行車にアラートを出すなど)なんかもできれば安全かもしれない。

何のために何をするか。

30 歳手前で、ベースのレッスンを受けるようになった。それまでずっと独学だったのだけれど、先生からは「何故その年で?」となんとなく疑問に思たようだった。ちなみに今は全然そんな感じはない。

確かに、大学を卒業して(音楽ではない)仕事に就くようになると、上手くなる必要というのは全くなくなる。つまり、 BGM の営業をするわけでもなく、コンテストに出るわけでもない。対価を得るためには能力を上げないといけないとか、何か目標を達成するために能力を上げないと行けないとかいう事はなくなる。

これは、仕事に照らしあわせても案外同じことが言える。社員というのは成長を求められるわけだけれど、実際のところ成長しなくても良かったりする。要するに、労働に見合う対価が支払われていて、その対価に満足していればそれ以上に能力を高める必要はない。自分にとって仕事に対する目標がなければ、能力を高める必要はない。

しかし、最近、自分を見つめてみると、音楽においても仕事においても特段の明確な目標や動機がなくても自身の成長を潜在的に求めている様子がある。別に演奏の機会がなくても楽器の基礎練をしたり、録音を聴き返して「どうやったら良い音がでるか」みたいな事を考えたりする。仕事でも、今の業務はとてもつまらないが、何か問題を見つけては取り組み、それをクリアしていくという行為は日常的に行っている。

どういう事か色々と考えてみた結果、「組織における改善の考え方」に当てはめると、自分の潜在的な動機について説明が付きそうだ。トヨタといった組織では、「カイゼンは業務のプロセスを改善するというだけではなく、むしろ、業務プロセスの改善を通じて、それに取り組んだ社員の知識やスキル向上を目的としている」という事だそうだ。

音楽で言えば、BGM の営業をすることも、はたまたコンテストに出場したり受賞したりすることも、別にゴールでも何でもなく、自身が進歩するためのステップに過ぎないと言う事。仕事で言えば、いかなる小さな取り組み、大きなプロジェクトも、全て自身の成長の糧という観点では同列とみなせるという事。

ちなみに、進歩してどうなるかというと別にどうなるわけでもない。進歩が周りから評価されて、収入を得られたりより大きなプロジェクトを任されるという事があるかもしれないが、やはりそれは副次的なもので、本質的には「進歩したいから進歩する」なのだ。

そういった捉え方をすれば、別に演奏の機会がなくても練習なりなんなりは当然するし、仕事がつまらなくても日々何かしらの取り組みを行っていくというのは何ら矛盾していないという事になるのかなと思う今日このごろ。

Phil Jones Bass D-400

PJB D-400 について。店頭で試奏した感想。

前提

こんな感じ。

動機:可搬性に優れたヘッドが欲しい

後述の Parker がアンプを非常に選ぶため、アンプヘッドだけでもスタジオに持って入れば大分セッティングが楽になるのではないかと思ったため。

なので求める要素としては下記の通り。

  • 軽量
  • 自然な(フラット)癖のない音が出る
  • どのキャビネットでもあまりぶれない音色が出る

使用するベース:Parker Fly Bass 5st (Hi-C)

クリアな音が特徴。けれどしっかり低音が出る。

アンプとの相性が結構あり、特徴あるアンプだと大抵上手くいかない。過去に使ったアンプだと、アンペグ、ギャリアンクルーガなんかはかなり辛い。ハートキはまずまず。

シャートラ、PJB, Acoustic Image なんかは結構良いライン。いわゆる Hi-Fi 系というか「フラットに出る」と謳われているアンプが良いらしい。

今まで使わせて貰ったアンプの中では、Walter Woods に BAG END の組み合わせが一番ベストであった。

試奏に組み合わせたキャビネット: Bag End (S-12D)

だったと思う。Bag End の 12 インチ一発。

試奏の際、比較したヘッド:Markbass Little Mark III

Richard Bona が使っているということで興味があったものの、Nano Mark 300 が店頭になかったためとりあえず LM3.
レビューなんかをみると「素直で癖がない」といった評価もあるが基本的にはイケベのサイトにある紹介のように「ウォームでパンチのあるサウンド」という印象。

Parker のベースをつなぐと、低音というか音圧がかなり出る。ツマミを全てフラット(0 時方向)にしていると、輪郭が出づらい。

Bona なんかが使っているとパンチがあるもののそこまで癖がある印象はないので、ジャズベあたりにフォーカスを絞ってチューニングされているのかもしれない。また、EQ は効きが良いので、きちんと使えば柔軟なサウンドメイクができるのだろう。

VLE や VPF といったツマミもあり、自分には多分使いこなせない(ツマミをいじる事にリソースをかけたくない)し基本特性がやはり Parker には合わないという事で、断念。ちなみに、Sugi のフレットレスだと全然問題ない。そういった意味で Sugi は偉大である。

D-400 の感想

店員さんの評価通り「フラットなんだけれど、従来の PJB よりもベースアンプ寄り」という感じ。ベースが単体として生きてくるトーンなのだけれど、アンサンブルの際に必要な低音というか音圧もきちんとフォローされている印象。別に周波数特性とか見ているわけでもないし、全然音響に詳しくないのであくまでイメージ。

金持ち、音楽で生計を立てている人、経費で落とせる人だったら Walter Woods の方を買うべきだが、D-400 であれば値段は 1/7 程度だし、重さも半分以下くらいだったと思うので十分ではないかと思う。

ヘッドフォンを通して聞いても(D-400 にはヘッドフォン端子が付いている)、印象は同じ。PJB の BIG HEAD よりも良い感じかも。アナログプリアンプがより良いのか、電源のおかげかそこらへんは不明。

Hartke キャビネットとの相性

良い。
たしか 10 インチ 4 発。
高音域はクリア。満足の音色。
低音域はちょっと輪郭が出づらい。あまり low bass をカットし過ぎると、存在も無くなるし。イコライジングを上手くやれば吸収できそう。

Ampeg キャビネットとの相性

イマイチ。
たしか 10 インチ 8 発。
持って行ったベースは Sugi だったので、トータルとしてはそこまで悪くはならないものの、Ampeg は何をどうやっても Ampeg なのかなぁ という感じ。
こちらも低音域(音圧)は出やすい。