車車間、路車間。
DENSO と docomo が通信を利用した車両制御システムの研究を協力して進めるとのこと。
具体的にどのような通信形態を考えているのかは分からない。LTE だの 5G だの言っているし、docomo が研究するくらいし、イメージ図からしても路車間通信のように見える。この種の研究自体はアドホックでも路車間でもずっと前から研究されている分野なので、IoT と同じく「5G 普及時の主導権争いの一つ」なのだろう。
記事の中では、「高度運転支援や自動運転技術」との言葉があるので、カーナビゲーションのための情報提供といった付随的な役割ではなく、より「安全」だとか「人命」に近いところを確保するために車両を制御する事に重点を置いているようだ。エアバッグなんかと同じ位置づけだろう。そうなってくると、技術の信頼性というのは非常に重要になってくる。使えたり使えなかったりみたいなものであれば、もし事故が起きた際に「インフラとしての責任」が問われる可能性があるからだ。
そういった前提の中で路車間をやるとなれば、それこそ、「全ての視界の悪い交差点に対して通信を行うための基地局を置くのか?」という話になる。基地局といっても、実際にはとても小さいものになるだろうし、一台あたりのコストは小さいだろうけれど、国土の狭い日本とて世の中にいくつ交差点があるだろうか。
「LTE のカバレッジは 98% 以上なのだから、新規に基地局なんて打たなくても良い」という考えもあるかもしれないが、「実はエリアになっていなかったのでシステムが適切に作動せずに事故になった」みたいなことも考えられる。そもそも局地的にしか意味のない情報伝達を、LTE のネットワークに乗せて行うか。より低遅延かつ、局地的な情報のやり取りを考えると、どれだけ路車間用の基地局を打てるか」が勝負になるだろう。まぁ、実際には費用対効果が付いて来るはずはないのだけれど。
落とし所としては、車車間と路車間のハイブリッドという事になるのだろうけれど、どういった社会が実現できるだろうか。車車間通信では幾分精度の低い制御を提供し、より危険な交差点(事故が起きやすいといった実績があるところなど)については、その地方の警察などと連携して基地局を設置していくといったところか。それであれば、歩行者の持つスマートフォンと連携して、ある種の信号機のような使い方(信号の設置できないような場所には、スマートフォンの存在を検知して基地局が周辺の走行車にアラートを出すなど)なんかもできれば安全かもしれない。
何のために何をするか。
30 歳手前で、ベースのレッスンを受けるようになった。それまでずっと独学だったのだけれど、先生からは「何故その年で?」となんとなく疑問に思たようだった。ちなみに今は全然そんな感じはない。
確かに、大学を卒業して(音楽ではない)仕事に就くようになると、上手くなる必要というのは全くなくなる。つまり、 BGM の営業をするわけでもなく、コンテストに出るわけでもない。対価を得るためには能力を上げないといけないとか、何か目標を達成するために能力を上げないと行けないとかいう事はなくなる。
これは、仕事に照らしあわせても案外同じことが言える。社員というのは成長を求められるわけだけれど、実際のところ成長しなくても良かったりする。要するに、労働に見合う対価が支払われていて、その対価に満足していればそれ以上に能力を高める必要はない。自分にとって仕事に対する目標がなければ、能力を高める必要はない。
しかし、最近、自分を見つめてみると、音楽においても仕事においても特段の明確な目標や動機がなくても自身の成長を潜在的に求めている様子がある。別に演奏の機会がなくても楽器の基礎練をしたり、録音を聴き返して「どうやったら良い音がでるか」みたいな事を考えたりする。仕事でも、今の業務はとてもつまらないが、何か問題を見つけては取り組み、それをクリアしていくという行為は日常的に行っている。
どういう事か色々と考えてみた結果、「組織における改善の考え方」に当てはめると、自分の潜在的な動機について説明が付きそうだ。トヨタといった組織では、「カイゼンは業務のプロセスを改善するというだけではなく、むしろ、業務プロセスの改善を通じて、それに取り組んだ社員の知識やスキル向上を目的としている」という事だそうだ。
音楽で言えば、BGM の営業をすることも、はたまたコンテストに出場したり受賞したりすることも、別にゴールでも何でもなく、自身が進歩するためのステップに過ぎないと言う事。仕事で言えば、いかなる小さな取り組み、大きなプロジェクトも、全て自身の成長の糧という観点では同列とみなせるという事。
ちなみに、進歩してどうなるかというと別にどうなるわけでもない。進歩が周りから評価されて、収入を得られたりより大きなプロジェクトを任されるという事があるかもしれないが、やはりそれは副次的なもので、本質的には「進歩したいから進歩する」なのだ。
そういった捉え方をすれば、別に演奏の機会がなくても練習なりなんなりは当然するし、仕事がつまらなくても日々何かしらの取り組みを行っていくというのは何ら矛盾していないという事になるのかなと思う今日このごろ。
Phil Jones Bass D-400
PJB D-400 について。店頭で試奏した感想。
前提
こんな感じ。
動機:可搬性に優れたヘッドが欲しい
後述の Parker がアンプを非常に選ぶため、アンプヘッドだけでもスタジオに持って入れば大分セッティングが楽になるのではないかと思ったため。
なので求める要素としては下記の通り。
- 軽量
- 自然な(フラット)癖のない音が出る
- どのキャビネットでもあまりぶれない音色が出る
使用するベース:Parker Fly Bass 5st (Hi-C)
クリアな音が特徴。けれどしっかり低音が出る。
アンプとの相性が結構あり、特徴あるアンプだと大抵上手くいかない。過去に使ったアンプだと、アンペグ、ギャリアンクルーガなんかはかなり辛い。ハートキはまずまず。
シャートラ、PJB, Acoustic Image なんかは結構良いライン。いわゆる Hi-Fi 系というか「フラットに出る」と謳われているアンプが良いらしい。
今まで使わせて貰ったアンプの中では、Walter Woods に BAG END の組み合わせが一番ベストであった。
試奏に組み合わせたキャビネット: Bag End (S-12D)
だったと思う。Bag End の 12 インチ一発。
試奏の際、比較したヘッド:Markbass Little Mark III
Richard Bona が使っているということで興味があったものの、Nano Mark 300 が店頭になかったためとりあえず LM3.
レビューなんかをみると「素直で癖がない」といった評価もあるが基本的にはイケベのサイトにある紹介のように「ウォームでパンチのあるサウンド」という印象。
Parker のベースをつなぐと、低音というか音圧がかなり出る。ツマミを全てフラット(0 時方向)にしていると、輪郭が出づらい。
Bona なんかが使っているとパンチがあるもののそこまで癖がある印象はないので、ジャズベあたりにフォーカスを絞ってチューニングされているのかもしれない。また、EQ は効きが良いので、きちんと使えば柔軟なサウンドメイクができるのだろう。
VLE や VPF といったツマミもあり、自分には多分使いこなせない(ツマミをいじる事にリソースをかけたくない)し基本特性がやはり Parker には合わないという事で、断念。ちなみに、Sugi のフレットレスだと全然問題ない。そういった意味で Sugi は偉大である。
D-400 の感想
店員さんの評価通り「フラットなんだけれど、従来の PJB よりもベースアンプ寄り」という感じ。ベースが単体として生きてくるトーンなのだけれど、アンサンブルの際に必要な低音というか音圧もきちんとフォローされている印象。別に周波数特性とか見ているわけでもないし、全然音響に詳しくないのであくまでイメージ。
金持ち、音楽で生計を立てている人、経費で落とせる人だったら Walter Woods の方を買うべきだが、D-400 であれば値段は 1/7 程度だし、重さも半分以下くらいだったと思うので十分ではないかと思う。
ヘッドフォンを通して聞いても(D-400 にはヘッドフォン端子が付いている)、印象は同じ。PJB の BIG HEAD よりも良い感じかも。アナログプリアンプがより良いのか、電源のおかげかそこらへんは不明。
Hartke キャビネットとの相性
良い。
たしか 10 インチ 4 発。
高音域はクリア。満足の音色。
低音域はちょっと輪郭が出づらい。あまり low bass をカットし過ぎると、存在も無くなるし。イコライジングを上手くやれば吸収できそう。
Ampeg キャビネットとの相性
イマイチ。
たしか 10 インチ 8 発。
持って行ったベースは Sugi だったので、トータルとしてはそこまで悪くはならないものの、Ampeg は何をどうやっても Ampeg なのかなぁ という感じ。
こちらも低音域(音圧)は出やすい。
PHIL JONES BASS D-400 コンパクトベースアンプヘッド
- 出版社/メーカー: PHIL JONES BASS
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The High-Velocity Edge - Chapter 7
The High-Velocity Edge に関する記事一覧は こちら
Toyota および関連企業が、いかにして問題を解決し、改善していくか、について。
これまでの章で、問題解決や改善の方法についてみてきた。それらの方法は、個々が信頼できるようなフレームワークを構築することであったり、複数部門(時には機能部門を超えて)にまたがるグループで解決すべき問題をシェアするといったものだった。
本章では、科学的な理論を基底として、高速かつ低コストで問題を解決し、より深いナレッジを構築していく事例を取り上げる。
- Aisin が大量生産特有の在庫の抱え込みや遅延をいかにして解消し、消費者のオーダにきめ細かく対応できるような反応の速さを獲得したか。
- いかにして工場の上級責任者が大きな規模の下で問題解決やプロセス改善について訓練を 行っていくか。
- Toyota のリーダたちがどのように訓練を推進していくか。
Problem-Solving Frameworks
Problem-Solving Goal: The "Ideal"
Toyota の人々と議論していく中で、彼らは、次のような考え方を持っていることがわかった。
彼らは、特定の原因またはそれらの組み合わせによって問題というものは起こると考えている。そのため、この特異な原因について対策を講じることによって、同種の問題にもう一度遭遇する事を回避する事ができると信じている。
その結果仕事に対してどのように反映されたかというと、
- 顧客が必要としている事に対して迅速に対応する
- 小さいバッチで処理する
- 時間を効率よく削減する
- より安全なものを選ぶ
といった効果があった。
Toyota における理想をまとめると、
- Defect-free: 欠陥のないものを
- On demand: 要求されたものだけ
- One piece at a time: その時に必要なものだけ
- Immediate: 直ちに
- Without waste: 無駄なく
- Safe: 安全に
- Secure: 確実に
となる。
Problem-Solving Discipline
道理をわきまえた人たちは、次のようなフォームを使っている。
- Background: 何について問題視しているか。
- Current condition: どのように仕事が行われていて、何の問題が発生しているか。
- Root-cause analysis: 何の起因が見つかっているか。
- Countermeasure treatments: どのように原因を打ち消し、問題を取り除こうと考えているか。
- Target condition: 取り組みが成功する事によって仕事がどうなるか。
- Actual outcome: 実際に到達した点はどこか。
- Gap analysis: なぜ期待点ないしては予測点と実際に到達した点に違いがでているか。
Example: Quality Circle at Taiheiyo
Taiheiyo(太平洋精機)は、Toyota の組立工場に部品を供給する企業である。
ここでの、溶接部門の環境改善では、オオハシという人物がプロジェクトのリーダを任されることになった。彼の上司であるグループリーダは、経験豊富な人物であったが、敢えてプロジェクトリーダからは遠いポジションにあった。
このグループリーダの主な仕事は、哲学的な教師といった感じだ。オオハシたちに問いかけ、彼らの技能を引き出し、科学的な理論を用いていかにして問題を解決するかを教えていった。
結果として、オオハシや彼の同僚は、よりよいプロセスを作り上げるというだけではなく、より深いナレッジを構築していった。そのナレッジというのは、後から出てきた別の問題に対して手立てを打つためのプロセスや技術である。プロセスの改善自体が目的ではなく、終わりではないということだった。オペレータがカイゼンのスキルを見つける事が重要であった、ということだ。
要点をまとめると、
- プロセス改善は作業員の技能開発のためのメカニズムに過ぎない
- 技能開発は問題を解決していくことで初めて効果が生まれる
- 改善活動は、科学的に、恣意的ではなく、緻密に組まれた構造的な実験を経て行われるべきだ
- 改善活動には彼らを上手く導ける先生が必要だ
となる。
Example: Quality Circle of Aisin
Aisin は、先のチャプタでも取り上げたように、push based から pull based に転換する事で、生産性の莫大な向上、生産品種の多様化、在庫の低減、リードタイムの短縮を実現した。
Aisin の改善は、一度きりの変化ではなかった。この企業が一線を画する点は、改善サイクルの多彩さにある。大規模な再構築に際しては、シニアマネージャによって行われているが、大部分の改善は現場に近いところで行われている。
イトウ氏の Aisin における活動は、生産ラインの能力を向上させる事にあった。
- 製造にかかる所要時間を減らす。
- 欠陥を減らす。
- 傷物を減らす。
最初のフェーズ、改善活動が始まる前の従業員は、標準化された仕事をこなし、できないことがあれば助けを呼ぶのみ事を責務としていた。改善活動が最初に形作らえた際、彼らは問題とみなす条件とそうでない条件を区別するトレーニングを行った。グループリーダはチームリーダとそのチームメンバに対して仕事を取り組む方法についてより批評的になってもらおうとした。
しばらくして、彼らは問題を見つけるための標準を身につけ、それに従って仕事をするようになった。チームは、問題を見つけ、どのように反応すればよいか提案できるようになった。これで、設計の仕方を学んだ事になる。しかし、構築はできない。対策を立てることができないのだ。チームメンバは混乱し、とてもフラストレーションが溜まった。彼らはより良くする方法がたくさんある事は学んだが、どのようにやれば良いかは全く知らなかったのだ。
チームの能力を向上させるための視点は 2 つある。
- 生産活動に於ける哲学
- 活動を強固なものにする能力
Example: Comprehensive Process Redesign at Aisin
Aisin では、プロセスの改善のための概要となるドキュメントが準備されており、彼らの発見のプロセスを論理的に捉えている。
- Background
- Objective
- Design Guideline
- Summary of result (capability / utilization)
- Production System Design (before)
- Production System Design (after)
- Actual Result
- Newly, Tech and Other Major Change
- Future Plan
- System Design: 5, 6
- before and after the improvement effort
- System Performance: 4, 7
- before and after the improvement effort
- Gap identification: 7
- predict result compared to actual results
- Counter measures: 5, 6, 8
- change in equipment, training. and methods
Example: Teaching Other to generate knowledge while solving problems
TSSC のコンサルタントは工場の従業員や監督者に生産ラインのリードタイムを減らすための手伝いをした。
彼らの改革の一つとして、次のようなものがあった。
- 事前のリードタイムは 15 分であった。
- そのリードタイムを 1/3 に減らしたいという目標があった。
- 活動を通じて、7.5 分、すなわち半分に減らすことができた。
この活動結果は、成功だろうか、それとも失敗だろうか?
結論としては、成功ではあるが、完全ではない、というところだろう。要求された時間の短縮というのはできているが、ゴールには到達していない。
実際のところ、5 分というターゲットはよく考えて策定された予測値ではなく、希望を基に設定されたゴールであった。ターゲットの設定ミスというだけではなく、彼らの想定が正しいかどうかを検証するチャンスが失われたし、彼らの経験が誤りだった事を証明した。
Example: Improving people while Improving Process
5 つのチームが試みたプロセス改善の方法について。
4 つのチームは、慣習的な方法を用いた。改善のポイントはプロセスの改善にあるという考えの基での方法である。業務を分担し、責任を個別に区切るようにした。結果として、最終日のプレゼンテーションは、ほとんどないしは全てのパートをリーダが行っていた。
一方で、(high-velocity organization に属する)あるチームは、別のアプローチを用いた。ポイントは、参加者のプロセス改善能力を、コーチングによって向上させるというところだ。コーチングは、プロセス改善を通じて行われる。仕事は一緒に行い(分けることはしない)、プレゼンテーションについても、彼ら一人ひとりがそれぞれ行ったことや、何故それが必要で何の効果があるかを説明する事ができた。
大部分の短期的戦略に基づき、分担よる効率化を図り、タスク化を行ったのに対して、優秀なチームは長期的戦略に立ち、指導を通じて目に留まるような結果をもたらしたのだ。優秀なチームのリーダにとって重要なことは、チームメンバに観察や分析し、試験的な変更をするという練習の機会を与える事だったのだ。それは、人を改革していくためにプロセスを改善していくという事だった。
The High-Velocity Edge: How Market Leaders Leverage Operational Excellence to Beat the Competition
- 作者: Steven Spear
- 出版社/メーカー: McGraw-Hill Education
- 発売日: 2010/05/03
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The High-Velocity Edge - Chapter 6 (3)
The High-Velocity Edge に関する記事一覧は こちら
日本の代表的な High-Velocity organization である Toyota(トヨタ自動車および関連会社)について。
Specifying Work Design and Building In Tests
ここではいつくかの例を基に、成功に導くという観点で詳細に明示されたプロセスというのはどういうものか、test build がいつどこでプロセスの失敗を検知させられるようにしたらよいかを見ていく。
Example: Assenbly-Line Work
Toyota の Kentucky plant では、例えば、工場で右前方のシートを設置する際、7 つのステップに区切ってその手順を定義している。それぞれのステップはどれくらいの時間で完了させるべきかについても定義されている。
Example: Training Assembly-Line Workers
Toyota plant では、新しい雇用者はそれぞれのステップに分けてトレーニングを行う。最初のステップが完了すると、初めて次のステップに進めるようになっている。これを繰り返していき、最後のステップを修了することで、初めて工場で作業をするメンバーになることができる。
トレーニングプロセスが適切に設計・運用される事で、作業員の問題に対する反応はより不屈であり制御されたものになる。
Toyota Kentucky におけるトレーニングの流れは次のようになっている。
- Screening
- Orientation
- 新しい雇用者はその工場についての紹介や安全についてなど働くにあたって基礎的なオリエンテーションを受ける
- Basics
- Fitness
- 実際の現場では体力が必要になるので、フィットネスセンターでトレーニング(エクササイズバイクなどがある)を行う。
- Skills
- 技術的なスキルを最後に学ぶ。
- ボルトの締め方、部品の取り回し方、スプレーの使い方など。
実際にお客さんが対価を払って購入する自動車やトラックは、これらのトレーニングを経た作業員が組み立てる事になる。
Toyota は自動車を作る会社であるが、これらのトレーニングプロセスが非常に重要な位置を占めている。トレーニングプロセスは厳密に定義されていて、その際に定義するものとしては、アウトプット、道筋、ハンドオフのタイミング、仕事のやり方となっている。そして、自動車の製造工程は jidoka によってまた厳密に定義されている。
Example:Managing High-Volume Mass Customized Production
Aisin はトヨタに部品を納入するサプライヤであるが、同時に一般顧客向けの製品を展開する事業部も有している。
1987 年、Aisin の Seiki 工場では、単純に製品を大量生産するタイプから、カスタマイズされた製品を生産するタイプへとスイッチすることになった。
Aisin のカスタマイズ式のベッドは、サイズ、素材、布地、色など全部で 850 通りの、かつカスタマイズされたマットレスを注文から 3 つで配送する。このような事が可能となった背景には、製造方法と情報生成という 2 つの側面からのイノベーションがある。
例を挙げてみる。巻線、成形、その他の製造センタでは、それぞれの製造スケジュールが独立しており調整を必要としないが、一連の製造工程の中でや、工場と顧客との間の中で、かなりの数の管理すべき目録が必要であった。そこで、Aisin は Just-In-Time による Pulled System を採用し、製造スケジュールは要求、要望があるものを基本に立てていく事にした。
製造ラインの診断は全体を通して行われた。工程間のリンクは同様に自己診断テストを有している。もし、布地を製造する工程と最終工程との間に同期外れが起これば、数分で検知できるようになっている。
ある布地が足りなくなったり逆に多すぎたりすれば、2 つのプロセス間はもはや同じペースでオペレーションができていないので、片方をスピードアップさせるかもう一方を遅くするする必要がある。
自己診断と自己修正という恒常性があれば、安定して製品を供給する供給するにあたって(数を数えたり記録したりといった)余計な情報を管理する必要がなくなる。
自己診断や自己修正を適切に行うようにするため、Aisin では工場全体の設計に即した意思決定を行う必要がある。一つの工程のペースを前の工程に揃えるためには、誰がどの機械を使って誰に製品を供給しているかを明示しておく必要がある。
Example: Consolidating Three Production Lines
Jidoka のアプローチは工場のように個々のチームにおいて絶えず続くような仕事に適しているようだが、大規模で複数のグループが関わるような一回限りのプロジェクトにおいても効果を発揮する。
ある Toyota のサプライヤはとある部品の需要減に直面し、生産ラインを 3 つから 1 つに統合する事にした。製造技術部のスタッフは統合すべきプロセスのために 13 ステップのプランを作成し、「誰が」「何の仕事を」「どの順番で」「どの資源とともに」「どれくらいの時間で」行うべきかを示した。
最初のステップで彼らは、行うべき仕事や、必要のないその他の仕事を把握する事ができた。予期せぬ仕事をすること、必要のない仕事を飛ばすこと、当初のプランを継続すること、そういったことだけで彼らはそれだけでは満足しなかった。むしろ、彼らの原稿に欠陥が証明されればいかなる時でも、彼らは何の仮説がもたらされ、その結果としてどんな選択が導かれるかを自身に問いかけていった。そうすることで決まって、計画の中の他のステップでも同じような仮説が転がっている事に気づき、前のステップで得ていた知見を基に次のステップをリバイズするという事をした。
Example: New Model Launch
Toyota は同じような車をアメリカと日本で供給している。
車というのは同じ部分も多いが、異なる部分もやはり多い。
ある工場では、全てが Toyota によって設計、運用されていた。一方の工場では、GM が使っていた遺産が流用され、随所にその名残があった。そのため、あるアプローチを一つの工場から別の工場に適用させるにあたって、いくらかの改変を行う必要があった。
そこで、Toyota はローンチするにあたって必ず日本の工場から行うことにした。
ある工場でのローンチが完了したら、その変更スクリプトをアメリカの工場に適用させる。アメリカの工場のスタッフは変更スクリプトを自身の工場で適用するにあたって、現地の状況を基にした知見をベースに日本のチームのスクリプトを改変し、投入することとした。ローンチが進む中で発生した問題や解決された問題については、その改善策を次の周期のスクリプトに組み込まれるようにした。
The High-Velocity Edge: How Market Leaders Leverage Operational Excellence to Beat the Competition
- 作者: Steven Spear
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全体を把握し、プロセスを理解する
言われたことを鵜呑みにするな。
会社に入ってからしばらくの間、主に以前の職場の上司から、常に言われてきた。自分でおかしい事がないか判断して、まちがっていれば訂正し、納得した上で取りかかれ、という意味だ。二日に一回はそれで怒られていたのではないかと思う。
組織が大きくなると、業務の分担が進んでいく。他人や他部署からの依頼が多くなるし、依頼することも多くなる。そういった中で言われたことをきちんとやるというのは、ある意味合理的なようにみえる。それぞれの部門できちんと業務を消化しているならば、相手にとやかく言わなくても良いわけだし、それで結果が出ないならば、相手に問題がある。
しかし、このやり方では、自分が全体の中でどのようなプロセスを担っているかが不鮮明になる。そうなると、
- 必要なアウトプットが不明確になる
- 問題が起きたときに具体的なアクションプランや妥協案が出しにくい
- アウトプットの妥当性が自分ではきちんと検証できない
といった懸念がある。
よく、仕事をする上では目的をしっかりと捉えろと言われるが、もっと言うならば、全体をきちんと捉えた上で、今担っているプロセスはどこかを把握する必要がある。
The High-Velocity Edge - Chapter 6 (2)
The High-Velocity Edge に関する記事一覧は こちら
日本の代表的な High-Velocity organization である Toyota(トヨタ自動車および関連会社)について。
A Framework for Designing Systems
High-Velocity Organization は以前の記事にある通り、複雑なオペレーションを管理するために必要な 4 つの capability を使い、他の企業と一線を画す方法で高いパフォーマンスを叩き出している。
Toyota の場合はどのようにシステムが設計、運用されることで、高いパフォーマンスを出すことができているのか。
System Output
設計者は、まずは、システム全体の目的を知る必要がある。
- 何が届けられるべきか?
- 誰に届けられるべきか?
- いつ届けられるべきか?
いわば、「お客様に対して、いつ、何が、どれだけ届けられるか?」がきちんと把握できている必要がある。これが大前提となる。
Pathway Design
次に設計者は、システムのアーキテクチャを知る必要がある。
- 誰がその作業を行ったり、責任を持ったりしているか
- システム全体のアウトプットを達成するために、なんのシーケンスが必要なのか
モノ、サービス、情報が最初から最後までどのように流れていくのかを知る必要があるという事になる。
Connection Design
次に、それぞれのステップにおいて、作業者はどのような繋がりを持っているかを知る必要がある。いわば、何がトリガとなって何を受け渡すか、ということだ。
情報、モノ、サービスは次から次へと渡されていくが、その際にどのようなアクションを経ているか、何がトリガとなるか、(渡すためには)渡す人が何をする必要があるかをきちんと把握する必要がある。
Methods of Individual Task Activities
最後に、どのように作業員が正確に仕事をするべきかを知る必要がある。
タスクを成功させるためには、どのような順序で、いつ、どこで、作業をし、どのような結果を伴う必要があるかをきちんと定義しなければならない。
The High-Velocity Edge: How Market Leaders Leverage Operational Excellence to Beat the Competition
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