お金のため以外に働く

仕事の合間、寿司屋のカウンタでランチを食べていた時の話。隣の客二人が次のような話をしていた。

  • その会社では営業職は出来高制で、基本給はすごく安い
  • 2, 3 年ほど前からその会社に雇われたとある営業の人物は、常に営業成績が悪かった
  • どうやら実家は農家で家持ちらしく、お金にはさほど困っていないらしい
  • 業を煮やした経営者が期限を設け「ノルマを達成できなかったらクビ」という約束を取り交わした
  • 結局その人物はノルマを達成できなかったが、「不当解雇だ」と裁判沙汰になった
  • 結論は「やはりお金に困っていないと人は働かない」

その会社が社員とどのような雇用契約を結んでいたかは置いておいて、「お金に困っていないと人は働かない」というような会社は端から聞いていて悲しい感じがする。

「お金のために仕事をするのは良くない」とか、「達成感を分かち合ってこそいい仕事ができる」とか、そういった話はよく聞く。それをそのまま捉えるとただの綺麗事のように聞こえる。普通に考えれば「いやいや、きちんと成果を出してその対価を貰ってこそでしょ」となる。

しかし、前述の例を出すと、お金というインセンティヴだけでは「払われる対価に対して満足した時点でその人はそれ以上に成長しなくなってしまう」という問題が出てくる。普通の人は、若い時には遊びたいし、年齢が上がるにつれて家族を養うといった目的のためにお金がどんどん必要になる。それを満たすために仕事に対して精を出すわけだけれど、そのうちにそのバランスが崩れる瞬間があるというわけだ。くたびれたオジさんはそうやって生まれるのかもしれない。

放っておいてもどんどんとゲインを上げていく人も居れば(その人はもしかしたらお金とは別の価値観も持っているのだろう)、止まってしまう人もいる。後者に対しては金銭的な雇用契約以外に対してのインセンティヴないしはゲーム性を与えなければならないのかもしれない。