The High-Velocity Edge - Chapter 7
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Toyota および関連企業が、いかにして問題を解決し、改善していくか、について。
これまでの章で、問題解決や改善の方法についてみてきた。それらの方法は、個々が信頼できるようなフレームワークを構築することであったり、複数部門(時には機能部門を超えて)にまたがるグループで解決すべき問題をシェアするといったものだった。
本章では、科学的な理論を基底として、高速かつ低コストで問題を解決し、より深いナレッジを構築していく事例を取り上げる。
- Aisin が大量生産特有の在庫の抱え込みや遅延をいかにして解消し、消費者のオーダにきめ細かく対応できるような反応の速さを獲得したか。
- いかにして工場の上級責任者が大きな規模の下で問題解決やプロセス改善について訓練を 行っていくか。
- Toyota のリーダたちがどのように訓練を推進していくか。
Problem-Solving Frameworks
Problem-Solving Goal: The "Ideal"
Toyota の人々と議論していく中で、彼らは、次のような考え方を持っていることがわかった。
彼らは、特定の原因またはそれらの組み合わせによって問題というものは起こると考えている。そのため、この特異な原因について対策を講じることによって、同種の問題にもう一度遭遇する事を回避する事ができると信じている。
その結果仕事に対してどのように反映されたかというと、
- 顧客が必要としている事に対して迅速に対応する
- 小さいバッチで処理する
- 時間を効率よく削減する
- より安全なものを選ぶ
といった効果があった。
Toyota における理想をまとめると、
- Defect-free: 欠陥のないものを
- On demand: 要求されたものだけ
- One piece at a time: その時に必要なものだけ
- Immediate: 直ちに
- Without waste: 無駄なく
- Safe: 安全に
- Secure: 確実に
となる。
Problem-Solving Discipline
道理をわきまえた人たちは、次のようなフォームを使っている。
- Background: 何について問題視しているか。
- Current condition: どのように仕事が行われていて、何の問題が発生しているか。
- Root-cause analysis: 何の起因が見つかっているか。
- Countermeasure treatments: どのように原因を打ち消し、問題を取り除こうと考えているか。
- Target condition: 取り組みが成功する事によって仕事がどうなるか。
- Actual outcome: 実際に到達した点はどこか。
- Gap analysis: なぜ期待点ないしては予測点と実際に到達した点に違いがでているか。
Example: Quality Circle at Taiheiyo
Taiheiyo(太平洋精機)は、Toyota の組立工場に部品を供給する企業である。
ここでの、溶接部門の環境改善では、オオハシという人物がプロジェクトのリーダを任されることになった。彼の上司であるグループリーダは、経験豊富な人物であったが、敢えてプロジェクトリーダからは遠いポジションにあった。
このグループリーダの主な仕事は、哲学的な教師といった感じだ。オオハシたちに問いかけ、彼らの技能を引き出し、科学的な理論を用いていかにして問題を解決するかを教えていった。
結果として、オオハシや彼の同僚は、よりよいプロセスを作り上げるというだけではなく、より深いナレッジを構築していった。そのナレッジというのは、後から出てきた別の問題に対して手立てを打つためのプロセスや技術である。プロセスの改善自体が目的ではなく、終わりではないということだった。オペレータがカイゼンのスキルを見つける事が重要であった、ということだ。
要点をまとめると、
- プロセス改善は作業員の技能開発のためのメカニズムに過ぎない
- 技能開発は問題を解決していくことで初めて効果が生まれる
- 改善活動は、科学的に、恣意的ではなく、緻密に組まれた構造的な実験を経て行われるべきだ
- 改善活動には彼らを上手く導ける先生が必要だ
となる。
Example: Quality Circle of Aisin
Aisin は、先のチャプタでも取り上げたように、push based から pull based に転換する事で、生産性の莫大な向上、生産品種の多様化、在庫の低減、リードタイムの短縮を実現した。
Aisin の改善は、一度きりの変化ではなかった。この企業が一線を画する点は、改善サイクルの多彩さにある。大規模な再構築に際しては、シニアマネージャによって行われているが、大部分の改善は現場に近いところで行われている。
イトウ氏の Aisin における活動は、生産ラインの能力を向上させる事にあった。
- 製造にかかる所要時間を減らす。
- 欠陥を減らす。
- 傷物を減らす。
最初のフェーズ、改善活動が始まる前の従業員は、標準化された仕事をこなし、できないことがあれば助けを呼ぶのみ事を責務としていた。改善活動が最初に形作らえた際、彼らは問題とみなす条件とそうでない条件を区別するトレーニングを行った。グループリーダはチームリーダとそのチームメンバに対して仕事を取り組む方法についてより批評的になってもらおうとした。
しばらくして、彼らは問題を見つけるための標準を身につけ、それに従って仕事をするようになった。チームは、問題を見つけ、どのように反応すればよいか提案できるようになった。これで、設計の仕方を学んだ事になる。しかし、構築はできない。対策を立てることができないのだ。チームメンバは混乱し、とてもフラストレーションが溜まった。彼らはより良くする方法がたくさんある事は学んだが、どのようにやれば良いかは全く知らなかったのだ。
チームの能力を向上させるための視点は 2 つある。
- 生産活動に於ける哲学
- 活動を強固なものにする能力
Example: Comprehensive Process Redesign at Aisin
Aisin では、プロセスの改善のための概要となるドキュメントが準備されており、彼らの発見のプロセスを論理的に捉えている。
- Background
- Objective
- Design Guideline
- Summary of result (capability / utilization)
- Production System Design (before)
- Production System Design (after)
- Actual Result
- Newly, Tech and Other Major Change
- Future Plan
- System Design: 5, 6
- before and after the improvement effort
- System Performance: 4, 7
- before and after the improvement effort
- Gap identification: 7
- predict result compared to actual results
- Counter measures: 5, 6, 8
- change in equipment, training. and methods
Example: Teaching Other to generate knowledge while solving problems
TSSC のコンサルタントは工場の従業員や監督者に生産ラインのリードタイムを減らすための手伝いをした。
彼らの改革の一つとして、次のようなものがあった。
- 事前のリードタイムは 15 分であった。
- そのリードタイムを 1/3 に減らしたいという目標があった。
- 活動を通じて、7.5 分、すなわち半分に減らすことができた。
この活動結果は、成功だろうか、それとも失敗だろうか?
結論としては、成功ではあるが、完全ではない、というところだろう。要求された時間の短縮というのはできているが、ゴールには到達していない。
実際のところ、5 分というターゲットはよく考えて策定された予測値ではなく、希望を基に設定されたゴールであった。ターゲットの設定ミスというだけではなく、彼らの想定が正しいかどうかを検証するチャンスが失われたし、彼らの経験が誤りだった事を証明した。
Example: Improving people while Improving Process
5 つのチームが試みたプロセス改善の方法について。
4 つのチームは、慣習的な方法を用いた。改善のポイントはプロセスの改善にあるという考えの基での方法である。業務を分担し、責任を個別に区切るようにした。結果として、最終日のプレゼンテーションは、ほとんどないしは全てのパートをリーダが行っていた。
一方で、(high-velocity organization に属する)あるチームは、別のアプローチを用いた。ポイントは、参加者のプロセス改善能力を、コーチングによって向上させるというところだ。コーチングは、プロセス改善を通じて行われる。仕事は一緒に行い(分けることはしない)、プレゼンテーションについても、彼ら一人ひとりがそれぞれ行ったことや、何故それが必要で何の効果があるかを説明する事ができた。
大部分の短期的戦略に基づき、分担よる効率化を図り、タスク化を行ったのに対して、優秀なチームは長期的戦略に立ち、指導を通じて目に留まるような結果をもたらしたのだ。優秀なチームのリーダにとって重要なことは、チームメンバに観察や分析し、試験的な変更をするという練習の機会を与える事だったのだ。それは、人を改革していくためにプロセスを改善していくという事だった。
The High-Velocity Edge: How Market Leaders Leverage Operational Excellence to Beat the Competition
- 作者: Steven Spear
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