読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

TOC - 制約条件の理論

TOC は Theory of Constraints の略で、日本では、「制約条件の理論」と呼ばれている。エリヤフ・ゴールドラット博士が開発した理論で、ビジネス小説 "The Goal" によって広く知られるようになった。"The Goal" は、最近ではマンガで分かるシリーズにもなっているので、最近本屋で見かけた人も多いのではないかと思う。

TOC はもともと「工場の生産ラインにおいてどのように効果を最大化させるべきか?」という視点でスタートした。それまで、生産ラインの最適化というと、「それぞれの機械の稼働率を上げていく事で無駄をなくす」という考え方が主流であった。休んでいる機械は何も産み出さないから、それは生産的ではないという事だ。

しかし、この考え方は部分最適化であるため、本当の意味で最適とは言えない。それぞれの機械は、ある製品を組み立てるためにあるフローの中の 1 プロセスに過ぎない。あるプロセスの稼働率を上げていき、仕掛品をたくさん作ったとしても、次のプロセスがその仕掛品を処理できる能力を持っていなければ、どんどん在庫が積み重なっていく事になる。在庫は、将来的に見れば「売上の原石」であるが、売れなければ「ただのコスト」だ。

TOC では、そういった考え方は捨て、「工場が生み出すアウトプット(製品)を最大化する」事を目的としている。この考えを、「スループット・ワールド」と呼ぶ。スループットを単位時間あたりの(完成品の)生産量と定義すると、スループットを決めるのは「ボトルネックのプロセス」となる。ボトルネックとは、生産ラインの中で最も単位時間あたりの(在庫の)生産量が少ない箇所を意味する。ちょうど、ビンの一番細い部分によって中の液体の出る量が決まるようなものだ。

スループットを上げるためには、ボトルネックに対して対処をすればよい。まずするべき事としては、ボトルネックのプロセスについて、生産量を上げるような処置を施す事だ。機械を導入したり、人員を充てたり、ボトルネックボトルネックとなりうる要因を見つけ出し、対処する。対処すると、別のプロセスがボトルネックとなる場合があるが、その際には次にそのプロセスに対して手を打つ。

また、ボトルネック以外のプロセスは、ボトルネックスループットに合わせて、各自の出力を調整する事が望ましい。例えばボトルネックの前のプロセスは、ボトルネックのプロセス以上に生産を行っても「ただ在庫を闇雲に増やすだけ」となり無駄になる。ただし、ボトルネックに対しては常に必要十分に仕掛品を提供する必要があるので、適正なバッファは持っておく必要はある。最も避けるべきことは、ボトルネック稼働率を下げないことだからだ。処理すべき仕掛品が揃っていない場合は、ボトルネックのプロセスは何も処理できない、すなわち稼働率が下がってしまう。

後段のプロセスであれば、そういった注意も必要なく、基本的には来た仕掛品をさばいていく事になるかもしれない。その場合にも「ボトルネックが処理できる量以上の仕掛品が来ることはない」のだから、それを処理する適正人員ないしは機械の稼働を「ボトルネックの処理量」に従って算出する事でコストダウンが図れるかもしれない。

ボトルネックに合わせて各プロセスがその稼働率を調整することを「ドラム・バッファ・ロープ」と呼ぶ。ボトルネックの調子に合わせて太鼓(ドラム)を叩く事で全体のテンポを揃える事、各プロセスは適正なバッファを定める事、全てのプロセスは一つの製品を生み出すという目的の下で繋がって(ロープ)いる事、この 3 つが念頭に入れれば、全体最適化の施策を効果的に回していくことができるだろう。

最初に述べたように、TOC は工場の最適化からスタートしているが、どんな分野にも応用が効く。例えばデクスワークではルーティンとなっているものも多くあるだろう。頻繁に取り組んでいる定常業務について、それぞれのプロセスを明確にし、各プロセスの繋がりを可視化すれば、工場の生産ラインのようなフロー(グラフとネットワークとも言える)が見えてくるだろう。フローが見えれば、ボトルネックとなるプロセスを見つけ出し、対処を施す事で、その業務は効率的になる。効率化の指標は、所要時間だったり金銭的コストだったりするだろう。所要時間が指標であれば、稼働が削減される事になるし、金銭的コストであれば、コスト削減になる。

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ザ・ゴール コミック版

ザ・ゴール コミック版