The High-Velocity Edge - Chapter 5 (1)
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アメリカ海軍の原子力潜水艦、商用ジェットエンジン開発、ウェブ広告と、それぞれの分野に於ける High-Velocity organization について。
アメリカ海軍の Power Propulsion Program
アメリカ海軍は 200 もの原子力潜水艦、30 に近い原子炉、500 もの炉心を運用してきた。かつて、潜水艦といえばバッテリーの制限を受けていたため、航海距離はせいぜい 20 miles 程度であった。原子炉を搭載することで、これが事実上無限となった。
これを実現するためには高信頼な原子炉を搭載する必要がある。当然、原子力の技術は当時新しいものであったため、原子力を安全に制御する方法もわからない中での文字通り手探りでの発進であった。もう少し言えば、
- 新しい科学を扱う
- 新しい物質を扱う
- 新しい製造システムを構築する
- 何千人ものエンジニアやオペレータを育て上げる
といったたくさんの課題を抱えていた。
当然、これらの課題の中で原子力潜水艦を製造・運用していくため、怪我や事故死といったリスクの中で計画を進めていく事になる。
こうした中で、"Navy's Nuclear Power Propulsion Program" (NR Program) が Hyman Rickover の下でスタートした。
この計画において "discipline of engineering" という考え方が重要となる。これは、
- グループは十分な知識を有していない
- コンスタントに、素早く、経験則だけではなく実験的裏付けに則して知識を習得していく
という基本的な考え方が根底となっている。この考え方の下では、「成功」と「失敗」ではなく、「成功」と「成功のための学び」しかない。すなわち、失敗というものはなく、そこから何かを学び取って成功に繋げるという事が求められている。
Capability 1: ナレッジの収集と問題の可視化
NR Program では「完全ではない、または正確ではない理解の下でプロセスが遂行された」状況をインシデントとみなす。そのため、例えば下記のような事象も「インシデント」とみなされる。
- step 1, 2, 3 は順番に遂行されなければならない
- step 2 の終了を確認するまでに step3 を開始してしまった
- 結果的には問題には発展しなかった
インシデントの分析において重要視されるのは、
- 何が起こったか?
- 状況、検討、技術面、議論などに誤解がなかったか
- 何故起こったか?
- 経緯に誤解がなかったか
- どのように改善するか?
- 誤解を解消するために何をするべきか
であり、特に複雑な状況において、知っていることと起こっていることとの間に大きなギャップがないかどうか、という観点が重要になる。
具体的な例を挙げて考えてみる。防壁の性能が悪かった場合、十分な性能に引き上げるための必要な補充(投資)が必要であり、加えて、付随する工学的なアプローチが求められる。これは、すごく当たり前の事である。では、防壁の性能が想定ないしは要求されているものよりも高かったらどうか。実運用上で考えれば、求められる性能を上回っているのだから問題ないように見える。しかし、設計者が想定している状況と現状が乖離しているという点は事実である。これは、過剰投資という観点でも望ましくないし、「エンジニアが想定しきれていない」すなわち、「何か設計上見落としがある」とも考えられる。すなわち、これらはいずれも「ギャップがある」という観点からインシデントであるとみなされる。
多くの試験を通じて、「悪いところ」から「良いところ」を区別させる、「理解できていないところ」から「理解できたところ」を区別させる。この繰り返しを通じて、ギャップを埋めていく事になる。
Capability2: 知識を構築していき、問題を解決する
High-Velocity organization の特徴として、問題に対して「頻繁に」「深刻に」「訓練的に」取り組むという点が挙げられる。普通の企業では、報告書は求められるものの、それは単純にファイルに閉じられるか、無視されるシロモノである。
キーとなるプロセスは、組織の中で「健全なセルフアセスメントが機能しているか」というところだ。紙ベースに終始するのではなく、単純に士官や徴兵された人たちを苦しめるためのものではなく、各自が能動的にかつ組織に対して効果的な活動とならなければいけない。
この活動のために士官は、船が評価されたタイミングや、全てのカテゴリではないにせよいくつかが上手くいったタイミングで「失敗した部分」や「取るべき適切なアクション」を特記として提出する事が求められてる。単純に「より良くする」であるとか「一所懸命に頑張る」では不十分なのだ。
組織というものは、技術に向かって適合していく必要がある。決して、組織に技術が適合していくということはあり得ないのである。だから、不明な技術があれば、それに寄り添うように組織は歩み寄って行かなければならない。また、より先の発展のためには、「データは決して完全にはならない」という事を肝に命じておく必要がある。特に、複雑な技術によって成立している製品を高い水準で運用するためにはこの考え方が必要不可欠になる。
(つづく)
The High-Velocity Edge: How Market Leaders Leverage Operational Excellence to Beat the Competition
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