The High-Velocity Edge - Chapter 4

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アルコアの成功例。

アルコアについて

アルコアはアメリカのアルミ製品を製造する会社である。業界内では、ひときわ安全な会社(従業員が負傷する確率が低い)である。

この章では、アルコアで行われた改革を元にして、High Velocity Organization の秘訣について触れている。

アルコアにおける 4 つの Capability

1987 年、Paul O'Niell がアルコアの CEO に就任した。彼はゴールとして「従業員の怪我をゼロにする」というものを掲げた。通常、CEO が定める目標としては、利益であるとか売上といったところが一般的であり、Paul O'Niell の定めたものは特殊といえる。

これを実現するために、O'Niell は次の方法をとった。

Capability 1: Seeing Problems as They Occur

O'Niell は従業員が怪我をした場合、24 時間以内に O'Niell まで報告させるようにした。部門長は O'Neill にそれを知らせるために、前もってデッドラインまでに彼ら自身が「従業員が怪我をしたという事実」を知る必要があった。

加えて、O'Niell は「知らせる」だけでなく、「正確に」知らせる事を義務付けた。温度、圧力、電圧など、その当時の状況というのは時と共に情報が曖昧になりやすいからだ。

Capability 2: Swarming and Solving Problems As They Are Seen

O'Niell が課した 2 つ目のルールは「部門長は、そのアクシデントが発生してから 2 日以内に再発防止策を含めた初期調査報告をあげる」というものだ。

これにより、アルコアは「即座に問題を認識し、即座に根本原因を分析し、数値を元に即座に対策を講じる」事ができる。

もともと、アルコアには、彼らが保有する設計や運用プロセスで培った技術力に見合う、補足的な知見が欠けていた。それは、
どのようにして安全な環境を作り上げたり安全な動作を行うかといった知見である。そのため、アルコアは、環境、健康、安全 (EHS) という異なる分野についてそれぞれ徹底した調査を行えるようにした。

もし、誰かが設備で怪我をしたり、しそうになった場合には、現場の担当者はその地域にいる EHS の専門家の助けを借りる事ができる。もしその専門家の手に負えないような内容であっても、部門にいるより上位の専門家の助けを借りることができる。上位の専門家でも無理であったとしても、企業が保有するスタッフが補助に回ることができる。それでも駄目であったも、社外の専門家を呼ぶ。

このように、アルコアでは、問題が起こった場合にそれを直視しして必ず解決させる。

Capability 3: Spreading New Knowledge

アルコアは、外部環境に対して独特な関係をとる事で競合他社に対する明確な差別化を図ってきた。先に述べた方法で手に入れた流儀により、アルコアはプロセスに関するナレッジを作り上げていた。それは苦労して勝ち取ったものであり、独占・寡占的なものであり、他社が到底真似できないものであった。これらの知見をより活用するため、アルコアは各領域で発見した知見を組織的にシェアさせる取り組みを行っていった。

一つとして、ミツバチのアプローチがある。どこかの部署で問題が挙がった際、管理職は「他に似たような問題が起こっていないか?」探す事ができるようになっている。もし似たような問題を抱えていて、それを解決した人がいる場合、その人たちの助けを借りたり、援助を求めたり、知見を求めたり出来る。こういた取り組みによって、ある地域で生まれた知見が他の地域で役に立つようになっている。

アルコアは、このプロセスをさらに発展させ、システマチックに行うため、IT システムを取り入れている。通常であれば、財務や経理、税務といった部分で IT を取り入れるところであるが、アルコアではまず初めに「安全」という課題を解決するために IT を取り入れた事になる。

Capability 4: Leading by Developing Capabilities 1, 2 and 3.

多くの企業では、中間管理職は問題に対してエッセンスだけ把握していて、現地現物についてはあまり理解していない。アルコアではそういった事は許されず、管理職クラスであっても、きちんと問題を認識し、解決し、そこで見えたものを元にして新たなナレッジを構築する事が求められている。当然、ナレッジは拡散され組織にとって役に立つものになるべきと考えられている。

リーダーは、問題が起こった時にそれがどういったものか、何故、起こったかという事を理解できるような、プロセスに関するナレッジをきちんと持っていないといけない。それだけではなく、他者に対して、業務を行うにあたって足りない部分を見つめたり、その際に改善策を開発、検証できるよう、指導できなければならない。

これにより、問題の発見し、それを改善し、それを拡散するというプロセスを会社として常に回していくことができる。